多くの会社で導入されている目標管理制度ですが・・・
さまざまな資料を見ると、けっこう多くの人が不満を持っている感じ。
なぜ多くの人が、目標管理に不満を持っているのでしょうか?
不満の原因はどうやら目標管理制度のめんどくささと、評価の不公平感にあるみたい。
私はけっこう長い間、人事の仕事に携わってきました。
今も関わっていますが・・・
確かに、社員の根強い不満はあるもの。
多くの会社がこの目標管理制度について、いろいろと工夫を重ねているのも事実でしょう。
けれども、なかなか簡単には解決しないみたい・・・
今回はこのやっかいな?目標管理制度について、会社の中高年仲間と考えてみました。
目 次
- どうも世間で評判のよくない目標管理制度・・・これにはちゃんとした理由がありそう?!
- そもそも目標管理制度って、何のためにあるのでしょうか?
- 目標管理を評価シートに絡めることから、さまざまに起こる不公平感?!
- 目標管理が本来の目的に沿って効果を出すには、それを社員の評価と切り離さないとダメみたい!
- まとめ
どうも世間で評判のよくない目標管理制度・・・これにはちゃんとした理由がありそう?!
今回は、中高年にとっての「目標管理制度」について・・・
専門誌やネット記事を見ていると、目標管理制度は使えないという不満が数多くあります。
私が担当する社内研修でも、社員のアンケートから、目標管理はいい評価というよりも、悪い評価が圧倒的に多い感じ。
これはなぜなのでしょうか?
目標管理制度は1960年代後半に、アメリカから日本に導入されました。
当時、この制度はアメリカを中心に、個人の能力と成果を高めるベストな方法とされたもの。
1950年代から高度経済成長が始まった日本。
けれどもその後 1960年代に入ると、成長率が少しずつ下降気味に・・・
そのような背景があったため、目標管理制度は日本の生産性を高める大きなパワーになると期待されました。
そのため、大手企業を中心にまたたく間に導入され始め、1990年代には中小企業も含めて企業の90%ほどが、何らかの形で目標管理を採用することに。
けれども、もともとあまり評判のよくなかった目標管理は、その後大きな批判を浴びるようになりました・・・
それは、なぜでしょうか?
そもそも目標管理制度って、何のためにあるのでしょうか?
目標管理は、MBO ( Management by Objectives) の日本語訳。
これからわかるように、目標(Objectives)を立てることによって、仕事の内容やレベルをマネジメントする(Management)こと。
目標管理という経営手法を最初に考案したのは、P・F・ドラッカーさん。
実務である経営を学問にまで体系化した人。
1954年に著した『現代の経営』(P80〜81)によれば、「事業は目標を設定してマネジメントする必要がある。(中略)言い換えるならば、事業は直感で行うことはできない。」
けれども、目標管理という言葉には、すごく硬いイメージがどうしてもつきまとうことに・・・
これは社内研修だけでなく、けっこう多くの社外研修でも、多くの参加者から同じような声を聞くところ。
目標という言葉は、誰でもよく使っているもの。
たとえば、100メートルを現在12秒で走っている陸上選手が、今年中に11秒で走ることを目標にするとか。
ある社会人が、半年後の資格試験に合格することを目標にする・・・など。
一方、管理という言葉はちょっとクセモノ。語感が人それぞれ。
たとえば、管理職と一般社員・・・誰でもその違いはなんとなくわかるものの、それぞれの人が思っていることや、実際にやっていることはけっこうバラバラかも。
そこで、「管理」という言葉を、「コントロール」という言葉に置きかえると少しは理解しやすくなるはず・・・
「めざす方向に、コントロールする」という意味だと、ピンとくるように思います。
こう考えると、目標管理というのは まったく違和感のある言葉でもないように思えるのですが、どうでしょうか?
「自分で立てた目標」を、その方向に着実に進むように「自分でコントロール」すること・・・
これは、まさに自分のために 自ら動くイメージがあり、少なくとも悪いものではなさそうな感じ。
目標管理を評価シートに絡めることから、さまざまに起こる不公平感?!
多くの会社では、この目標管理を「評価シート」に落とし込んで、それぞれの社員の成果を処遇に反映させています。
ここから、さまざまな不満が生じることに・・・
①社員の取り組む業務目標が、会社がめざす重点推進事項と必ずしも合っていないみたい・・・
(所属長が適切に指導できていないため?)
②社員ごとの目標内容とレベルにバラツキがあるのに、それぞれの評価ウェイトが適切に行われていないみたい・・・
(簡単な目標内容・レベルにする方が達成しやすいから、評価がよくなるかも?)
③期末評価において、評価者ごとにどうしても甘辛が出てしまうみたい・・・
(評価者訓練でそれなりに学んだはずなのに、本番の評価になると評価者の思惑が入るみたい? それがうまく調整されなければ、公平な評価は期待できない感じ?)
問題点をあげるとキリがありません。
けれども、人事評価などの実務を長年行ってきた経験からすると、大どころはこんなところでしょう。
とすると、自分の能力と成果を高めるための目標管理の目的が、一部 すっ飛んでしまっているようです・・・
目標管理が本来の目的に沿って効果を出すには、それを社員の評価と切り離さないとダメみたい!
目標管理はあくまでも自分の能力と成果を高めるためのツール。
これ自体が悪いわけではないでしょう。
評価はあくまでも各社の評価のモノサシ(評価基準)に基づいて、適切に行えばいいはず。
目標管理によって自分の能力と成果を高めた社員は、実際の評価でも自ずと好評価になる傾向があるでしょう・・・
これは私の会社の実務でも、そのような傾向が長年にわたる評価の統計データから明らか。
それでも、社員全員が個々に納得できるかは・・・難しいでしょうが。
会社の管理職や一般社員と、社内教育などの場で自由に意見交換すると、改善に向けてけっこういい意見が出てきます。
目標管理制度というツールを活かす観点からさまざまに検討すると、今よりはいい制度になるような感じ・・・
まとめ
社員の能力を高める取り組み。
社員の業務成果を評価する取り組み。
これらは本来それぞれ別物のはず・・・
けれども、これらを一緒にして人事評価の運用をしてきたから、さまざまな弊害と不満が起こっている感じ。
会社の仲間と話していて、そのような意見が大勢を占めることになりました。
そのため、私の会社では人事制度全般について労使で見直しを開始しました。
人事に限らず、さまざまな制度やルールは時間が経つにつれて、本来の目的がどうしても失われがち・・・
クルマや自転車、日頃何気なく使っている道具類も定期的なメンテナンスが不可欠でしょう。
同じように、社員の感じ方の変化に合わない人事制度やルールも意識して見直していけば、今よりは意味のあるものに変われるはず・・・
・どうも世間で評判のよくない目標管理制度には理由がありそう?!
・そもそも目標管理制度は、自分で業務目標を立てることによって、自分自身の仕事のできばえを高めていこうとするツール・・・だからこれが悪いわけではないはず!
・目標管理と評価シートを無理に絡めるから、不公平感が起こるみたい!
・目標管理が本来の目的に沿って効果を出すには、それを社員の評価と切り離さないとダメみたい!
今回は目標管理制度について、中高年仲間とともに長年考えていたことを書いてみました。
ブログをご覧いただき、ありがとうございました。